グランマガザンえぞ屋さんはてな支店

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嵐の新曲『未完』のリズムの先進性(『今ジャズ&ポリリズム』ってなんだろ?)

 

 タイトル通り、「『未完』という曲のリズムがどれだけJ-POPの曲として異端的なのか」というおはなしです。リテラシーが高い方に今回の内容をまとめて言ってしまうと、「構造的に一番近いのは、もしかするとマイルスの”Honky Tonk”の可能性もまあなくはないのでは?」です!!! 「嵐の新曲がマイルスのホンキートンク」!!! なんという文言なのでしょうか!!!

 Mステで聴く前からCMとかで見てて「お~3連じゃんクロスできるねー嵐の新曲~」なんて言ってたんですが、わくわくしながらいざMステで聴いてみたらとてもそれどころじゃないじゃないっすかヤバすぎる!!!! のにこの興奮を誰とも分かち合えてないんス!!

 

 以下で説明する音楽の技法はすべて『今ジャズ』という、読んで字のごとくな「ここ最近のジャズ」のことなんですが、そんな最先端とも言える音楽で多様されているワザです!!!

下でも書いたんですが、それが嵐の曲で聴けるなんて信じられません!!!

「嵐ファンも今ジャズファンもポリリズムファンも必読」なんつって!!! 

  

・『未完』のリズム構造アナライズ&「ポリリズムってなんだ?」の会

 

 ここに4拍子があります

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この1拍それぞれを3つに割ります

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 これが『未完』のイントロとサビのリズムです。この12個の音符たちに沿って、メロディやドラムス等々のフレーズが作られていきます。

(この曲イントロが2段階あってまぎらわしいんですが、最初の大野くんの美声が響き渡っているイントロです。ブラスがぱっぱら言ってるジャズっぽいイントロではなく)

 

 そうしたら、じーっと譜面を眺めてみてください。先ほど申し上げましたように、1小節の中に12個音符が入っていますよね。

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いまこの音符は『3つでひとグループ』になっていますが、これをちょちょいとイジってみると…

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もともとは『3つでひとグループ』だったものが、今は『4つでひとグループ』になっています!!

では、これで何が変わったのか、実際に音を聴いてみましょう。

左耳が上の楽譜『3つでひとグループ』で、右耳が下の楽譜『4つでひとグループ』です。マルつけたところが鳴ります、いきますよ~~

  どうでしたか? 「なんか、左耳が速くて右耳のほうが遅いな…」という感じがしたのではないでしょうか。よくわからなかったという方は、イヤフォンヘッドフォンの右耳か左耳、それぞれ交互に聞いてみるとかなり分かりやすくなると思います。

 では、どうして「右耳の方が遅い」のかというと…

このかたち、

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3拍子(と同じ)だからです!! 「言われんでも気づいてたわ!!!」という方スンマセン!!!

 わたしたちは「一小節にいっぱい音符が詰まってる方が『テンポ速いな~』と感じる感覚」を持っています。なので、

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4拍子(1小節に音符が4つ入る)と3拍子(同じ長さの1小節の中に音符が3つ入る)なら4拍子のほうが速く感じて、3拍子のほうを遅く感じます。

 実は、この4拍子とか3拍子とか、異なる拍子が同じ小節の中にある状態のことを『ポリリズム』というのです!!!!

(ただし、この場合のように公倍数のみでポリリズムってる場合、ポリリズムの前段階の『クロスリズム』であるとして明確に線引きしている人もいます。し、やはり『ポリリズム』と言う人もいます。ややこしや)

 Perfumeポリリズムではこの『ポリリズム』は使われておらず、あの曲で使われている技法は、正しくは『ポリメトリック』という名称です。

(そのポリメトリックも『ポリリズム』とする人もいるんですけどね…マジややこしや…)

 

 さてこの『未完』、大野くんの美声イントロからジャズっぽいイントロに移り変わるとき、「あれ、なんかテンポ遅くなったな…」と感じませんでしたか?

その仕組みが、実はこのポリリズムで(も)説明できるのです。

 「え、でもジャズっぽくなってからも3拍子じゃなくて4拍子になってるよね!?」とお思いの方、ずばりその通りです!! では実際はどうなっているのかというのを順に見ていきましょう!!

 

(・0, まず4拍子の1拍を3つに割ります)

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・1, 4拍子を3拍子(下のほう)でリズムを取ります

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・2, そうしたら、いまは3拍子なので「1, 2, 3. 1, 2, 3.」と3をひとまとまりとしてリズムを捉えていると思います。これを~~~

・3, 3拍子でとってるリズムはそのままに、「1, 2, 3, 『4』. 1, 2, 3, 『4』.」と1拍ぶん多くとってみてください!!! 

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 とはいえこれは自転車と同じで、トライしたらいきなりできるようなモノではとてもありません!! 出来なくてもお気に病む必要は一切ありませんので大丈夫です!!!

 この↑図の下段の状態が、ジャズっぽいイントロからBメロ終わりにかけてのリズムの構造です。

なので大野くん美声イントロの、上段のリズムから下段に一瞬で変わります!!  

 J-POPとしてはかなり異端、というよりこんなリズムチェンジが組み込まれているJ-POPの曲(しかもチャート上位に余裕で入る)、不勉強ながら他に知りませんし、おそらく今後もそうそう出てこないと思います!!! 極めてヤバいすこのリズムチェンジ!!!

同じく動画作ってみました!! 参考にしていただければ!!!

 

 耳の良い皆さんは「Bメロからまたサビに行くときにまたテンポ変わってるよね?」とお思いだと存じますが、今度は逆に遅い4拍子から速い4拍子に戻るので、今度は図下段から上段に逆行します!!!

 

 さらに耳の良い方は「サビ終わりの間奏の、クラシックのとこでもまたなんか変わってない?」とお感じになっていると思います、ここまで気がつけばもうとっっっ…てもすんばらしい耳をお持ちですね!!

 ここでは『サブディビジョンの変化』という技法、技法…? が使われています。

上で『今ジャズ』で多様されていると書きましたが、これはJ-POPでもたっま~~~に使われたりするのでそこまで珍しいものではありません。が、ブラックミュージックでは日常的に使われる、ジャズミュージシャンやラッパーには基礎中の基礎スキルです。

 具体的にはどういうことなのかというと…

サビのリズムはこうでしたよね。

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今まではこの4分音符1拍を3つに割ってきましたが、この間奏のはじめのところ4小節では、こんなふうに

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1拍を4つに割り変えています。

 こんな感じで、1拍をいくつに割るかを変えることを『サブディビジョンを変える』と言います。ここも音源も用意してみたのでぜひご活用ください、同じテンポのまま『3に割る→4に割る』を2回繰り返します~~。テンポは変えてないですが、加速したり減速したりしているように聴こえます!!

 サビが終わりモーツァルトの40が4小節流れて、櫻井くんと相葉くんの歌に入るとまた

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この状態に戻ります。戻るのですが!!

 

ラップに入ると、櫻井くんのラップだけじゃなくて後ろのオケもこっちに戻ります!!

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 サクラップの入りを譜面に起こすとこうなります↓

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4文字&4連=16分を基調としたラップが続きますが、これはもしかすると翔くんが「今また割り変えてるよ~~」ということを我々に分かりやすく教えてくれているのかもしれません!!! 真意は分からないですがもしそうならめっっちゃアツい!!!(笑)

 そして、最後にまた最初の3つに割る状態に戻っておしまいです。

 

 『未完』では『速い4拍子』と『遅い4拍子』が交互に演奏されていますが、それらが同時に演奏されているヤバい曲が、上で書いたマイルスデイビスの”Honky Tonk”という曲なのです。

 パッと聴き、上で書いたような複雑なことは起こっていないように聞こえるのもマジックです。

 “M/D”という本にこの曲の分析が載っているのですが、この曲とは『遅い4拍子』の作り方がすこし違います! ご興味のある方はどう違うのか、ぜひ買って読んでみてください!!! 分厚い本ですが分析部分はほぼ一瞬で終わりますので!!(笑)

 

 このマイルスデイビス、「ジャズの帝王」と呼ばれジャズ界でも一番くらいで有名なヒーローなのですが、そんなものすごいジャズミュージシャンの楽曲と嵐の新曲が構造的にかなり近い、なんてものすごい面白いじゃないですか!! 「ですか!!」に賛同して下さる方が今どれだけいらっしゃるのかは分かりませんが!!

少なくともポリリズムによるリズムチェンジなんて、オリコンにチャートインするようなJ-POPの曲で使われるような技法ではまっずありません凄すぎる!!!

 

 ただ、あっのー…。えっとー、ここまで書いといて何なのですが、実際はこれポリリズムではなく変拍子として処理できます、というより作編曲者お二人はこっちで作ったと思います…。

もちろんどっちで取ってても正解なんですが、曲を分析してみると明らかに変拍子の方で作ったなという痕跡が確認できて、じゃあなんでわざわざポリリズムに絡めたかというと…。最初に聴いたときポリによる減速にしか聴こえなくて、わざわざ手元にあった新聞に↑みたいな図書いて「ほら!! これヤベーって!! こんなリズムチェンジJ-POPで他にないじゃん!!!」と説明したのに「ふーん…。楽しそうだね」としか言われなかったからです!!!! でもどっちともで取れたほうが楽しいですよ!!! スンマセン!!!!

・イントロ1 12/8, 9小節

・イントロ2&AメロBメロ 4/4, 43小節

・サビ 12/8, 17小節

・インター 12/8のテンポのままサブディビジョンが変わる。4拍子の1拍それぞれを3で割ってたのを4に割り変える、4小節(ここはポリリズムのほうで取ってたほうが打ち込みやすい)

・Dメロ 12/8, 16小節

・ラップ ここも同じく12/8のテンポのままサブディビジョンが変わる、12小節

・Eメロ(「輝き出す~」) 12/8, 6小節

・サビ 12/8, 16小節

・アウト 12/8, 9小節

 

 でBPM210とプログラミングすると『未完』がぴったりハマります(間奏とラップパート以外)。

上で「変拍子でもポリリズムでも正解」と書きましたが、アナライズを終えてみると『変拍子の手法を利用し、ポリリズムによる減速を模倣している』ようにも聴こえますし、逆の『ポリリズムの手法を利用し、変拍子による減速を模倣している』にも聴こえます。

 に、したってどのみち変拍子で作られているのですが、その勘違いもやむなしというか!!! サビのメロディはポリリズムというかクロスリズム的なアプローチで作られています!!

 (サビ1小節目の「Now! Now! Now! 望む」が明確に4拍子=3拍でひとグループのフレーズであるのに対し、続く2小節目の「方へと」が2拍3連=2拍でひとグループのフレーズで入るので、我々リスナーのリズム感を撹乱させます。この『フォーマル→崩す→』によって得られる効果については、『キツく閉められていたネクタイを緩めた瞬間』で考えると分かりやすいかもしれません。もっとわかりやすい例は…ダメだこの場にそぐわない例ばっかがパッパカ浮かんでしまう!!

 また、同じような仕掛けが「変わることのないAnswer この手で壊したいなら」の2小節でも行われています。『何拍でひとグループのフレーズになっているか』に着目してみると、「なーんかここリズムよくわかんなくなんない?」という違和感の正体がわかるかと思います)

 

 そんなわけで!!! ここでは変拍子でしたが、とりあえずタイトルに沿ってもうちょっと話を進めると、今回書いたようなポリリズム(の変形)、サブディビジョンの交換等々を利用して新しい音楽を作っていこう、とするジャズミュージシャンの方々がここ10年くらいで現れてきまして、そういう人たちを含めた新しいジャズを『今ジャズ』と評したりしているみたいなのです。

 

今ジャズ4例

 

Playmate At Hanoi / Date Course Pentagon Royal Gardn

[Unofficial]

 日本のバンドです。20年近く前の曲で今ジャズにはカテゴライズされてないと思うんですが、『未完』のイントロ・サビ等とまったく同じ構造なので

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3拍子でもとれるし4拍子でもとれるという自由度の高い曲。もちろんベースラインも3拍子と4拍子両方で取れますが、ベースの栗原さんは3拍子でとってるみたいですね。

対して、0:34あたりから右チャンネルのドラムが4拍子を強調する動きを見せます。みなさんはどっちの方が取りやすいですか?

(真ん中に立ってる菊地さんが『クロスリズムって呼ぶ派』なのですがキーボードの坪口さんは『4拍子の2拍3連もパフュームのポリリズムポリリズム派』なので同じバンドの中でももうこんな感じ、もうひっっじょうに混迷に混迷を極めております!!!)

 

Smells Like Teen Spirit / Robert Glasper Experiment

[Official]

 こっちは『ザ』な今ジャズ!!

 0:03~のハイハット(チチチチいってる楽器)は6連符の細かいグリッドに沿って演奏されていますが、0:05~では4連符=16分音符のグリッドで演奏されています。結果、1拍を分割する数が減ったので(同時に1小節に入る音符の数も減り)、減速感を生んでいます。

 2:42のところでキーボードのグラスパーが「タタタタ…」(6連です)と弾いたのを、ドラマーのマークコーレンバーグが同じくハイハットでなぞっていきます(こっちは6連にも7連にも聴こえる、うえに2:53のところでまた加速して+1…も~わけわからん!!)

  

Goodbye Girl / CRCK/LCKS

[Official]

 こちらも日本のバンドです!! ロックファン・ポップスファンの方にも耳馴染みが良いと思うのでぜひ聴いてみてください!!

はじめは4拍子ですが、0:43からそれまで4拍入っていたところに6拍ぶん押し込んでいるので加速したように聴こえます。そこから4拍に戻したり6拍入れたりをひんぱんに繰り返すことで、えーとそうですね、驚きと楽しい感じを演出しています!!(笑)

 ほかにもこっちとか

あと『傀儡』という曲が超オススメだったんですが、ひとつき前くらいに消されてしまったので残念っす…再アップロードしてくれたらいいなあ!!

 

Offshore Monsters / Josef Melin

 『未完』作曲のJosef Melinさんの曲です。ドラムとかボーカルのモタり方がかなり濃厚に今ジャズ的エッセンスを感じさせるっス…

アーティスト紹介みたいなのを読んでみるとスティーリーダンの名前が出てたり「確かに『未完』出てきそうな感じあるわ~~」と納得!!

  (直近のリリース曲だと”秋めいて Ding Dong  Dang!”というアイドルマスターの曲が『未完』よろしく4→3→4というサブディビジョンの交換を頻繁に行っており、一種サプライズ効果をもたらしています…ご興味のある方はぜひ!!)

 

 そんな「最先端を行こう」とするミュージシャンたちの、ポップスとしては言っちゃあ前衛的とも言えるような技法を、こんな国民的というか、ヒットチャートド真ん中の嵐が曲の中に取り込んで、そしてそれがヒットしてたくさんの人が(ポリリズムとかよく分からなかったとしても!!)聴くということは最高に挑戦的でもあり、ひっっじょ~~~うに意義のあることだと思います!!! 

 

 いや~~~…。今回改めて、今までもずっと嵐のことは好きなつもりではいましたが、この曲聴いてもっと好きになりました!!! 「これで行こう」ってゴー出せるバックの方もすげえっす!! 3:4クロスはやったんで、今度は4:5ポリとかやって欲しいですね!!! 来年あたりコンサートも連れてってもらおうかなと思います!!! 当たれば…!!!(笑)

  というわけで、最後までお目通しいただきありがとうございました!!!

内容的にも文章的にもツラいものがあったと思いますが、こういうリズムのトリックが分かるとめっちゃくちゃ楽しく踊ったり聴いたりできるので、ほんっっっのちょっとだけでいいのでこういう耳を持って音楽に接していただければいいなあと思います!!! 新しい発見やオドロキが、もっと言うと魔法の使い方をひとつ見つけたみたいで楽しいですよ!!!それでは今回はこれでアナライズを終了したいと思います、最後までお疲れさまでした!!!

 

 次の記事は「小沢健二さんの新曲『シナモン』を通して、日本ではなかなか浸透していなかったアメリカ音楽の要素を見ていこう」という、なんでしょう、前回前々回記事同様言いたいことをサワリだけ言ってあとは丸投げるスタイルです!!(笑)

コード譜っぽいのもあるのでぜひどうぞ!